。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
まぁ変態タイガ相手だから、何されるかわかったもんじゃないって思ってるだけだろうけど。
「ちょっと待って」
そんなあたしたちを追いかけるようにして、タイガがキョウスケの腕を掴む。
キョウスケは驚いたように目を開いて、だけどそれは一瞬で、すぐにタイガの手を払うとキョウスケらしくない仕草で乱暴にタイガの腕を捻り上げ、
肩を掴むと壁に押し付けた。
「いたっ!痛い痛い痛い~~。どうしたのさ、ひよこちゃん。今日はいつもにも増して激しいね」
とタイガがみっともなく喚き、へらへらとしまりのない笑顔で振り返る。
さっきの喧嘩している態度とはまったく違って、ちょっとかっこ悪いし。
キョウスケがタイガの肩を掴み、腕を捻り上げている。
その光景を見て―――……
思い出した。
あのタトゥー。タイガの腕にあったトライバル模様の…
どこで見たのか、どんな状況で、だったのか―――
「やめな、キョウスケ」
あたしはキョウスケの肩に手を置いて、真剣な目でキョウスケに目配せするとキョウスケはようやく手の力を緩めた。
「心配してくれてるのはありがてぇが、こいつに何かされたわけじゃねぇし。とりあえず帰ろうぜ」
あたしが出口に目を向けると、キョウスケも大人しく手を引っ込めた。
ガタンゴトン…
電車がまたも頭上を行き交う。
その音に耳を傾けながら、記憶の断片がパズルのピースのように一つ一つ出来上がっていく。
あれは―――……
完全に思い出したときだった。
先を急ごうとしてあたしは脚を止めた。
風がふわりと香りを運んできた。
覚えのある爽やかな香りに―――あたしは目を開いた。