。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
トンネルの出口に一人―――背の高い男が立っている。
ダークカラーの細身のスーツ。
すらりと高い身長。
タチバナ―――!!
タチバナは離れた場所―――…入り口で、ズボンに手を突っ込んで、こちらをじっと見ている。
その顔はつるりと無表情だった。
「誰です?知り合いですか?」とキョウスケが不思議そうに聞いてきて、あたしはそれに何も返せなかった。
ただじっとタチバナを睨んでいると、タチバナはふっと口元に笑みを浮かべて、やがてゆっくりと歩き出した。
入り口を横切って、あたしの視界から消えると呪縛が解けたように、はっとなって慌てて走り出した。
「タチバナっ!!てめぇ、待ちやがれっっ!!」
「お嬢!」
「うさぎちゃん??」
あたしの後を慌ててキョウスケとタイガも追ってくる。
出口までたどり着くと―――タチバナの姿はどこにもなかった。
駅裏なのか、汚い壁と乱雑な自転車置き場が広がっているだけだ。
どこへ消えたのか顔をきょろきょろさせるものの、入り組んだ細い路地がいくつにも分かれていて、その姿を追うことはできなかった。
タチバナ―――……
偶然
にしちゃ、出来すぎている。あいつ、なんでここにいたんだ。
まるであたしたちの行動を監視するかのように―――……