。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



トンネルの出口に一人―――背の高い男が立っている。


ダークカラーの細身のスーツ。


すらりと高い身長。




タチバナ―――!!




タチバナは離れた場所―――…入り口で、ズボンに手を突っ込んで、こちらをじっと見ている。


その顔はつるりと無表情だった。


「誰です?知り合いですか?」とキョウスケが不思議そうに聞いてきて、あたしはそれに何も返せなかった。


ただじっとタチバナを睨んでいると、タチバナはふっと口元に笑みを浮かべて、やがてゆっくりと歩き出した。


入り口を横切って、あたしの視界から消えると呪縛が解けたように、はっとなって慌てて走り出した。


「タチバナっ!!てめぇ、待ちやがれっっ!!」


「お嬢!」


「うさぎちゃん??」


あたしの後を慌ててキョウスケとタイガも追ってくる。


出口までたどり着くと―――タチバナの姿はどこにもなかった。


駅裏なのか、汚い壁と乱雑な自転車置き場が広がっているだけだ。


どこへ消えたのか顔をきょろきょろさせるものの、入り組んだ細い路地がいくつにも分かれていて、その姿を追うことはできなかった。



タチバナ―――……



偶然



にしちゃ、出来すぎている。あいつ、なんでここにいたんだ。


まるであたしたちの行動を監視するかのように―――……








< 515 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop