。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
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大通りに出てもキョウスケはあたしの腕を握ったまま、なかなか離してはくれなかった。
「あの…キョウスケ…手…そろそろ…」
とおずおずと言うと、
「あ、すみません」
といつものキョウスケらしい淡々とした声で、手はすぐに離れていった。
すっかり陽が暮れて―――街は夜の雰囲気に包まれていた。
行き交うカップルが腕を組んだり、肩を組んだりしていて、昼とはまた違った雰囲気にあたしは急に恥ずかしくなった。
「ところで何でおめぇは…」
と言いかけたところに、
「朔羅っ!!」
なぁんで、あたしが喋ろうとするとこうやって邪魔が入るんだよ!
イライラした面持ちで声のした方を振り返ると、
歩道を行き交う歩行者達を掻き分けて、まるで波に逆らうように、必死な感じで戒が走ってきた。
戒―――……
「俺が呼んだんです。心配してるだろうから」とキョウスケが無表情に言って、反対に戒は必死な形相であたしの元に駆け寄った。
いつもみたいな余裕は微塵も感じられなかった。
「朔羅!良かった!!無事みてぇだな!」
戒はあたしを見ると、人目も憚らずぎゅっと抱きしめてきた。
ぅわ!!
ここ街のど真ん中だし!
恥ずかしさに思わず押し戻そうとするも、戒の体はびくりとも動かない。
まるであたしの存在を確かめるようにぎゅっと強く抱きしめられて、頭を引き寄せられる。
恥ずかしいケド……
戒の嗅ぎなれた柔軟剤の香りと、爽やかなミントの香りに―――
すごく
安心できた。