。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。

雪国!?




◆ 雪国!? ◆



戒やキョウスケにも分からないことってあるんだな。


ま、相手があの変態タイガだからな。予想も付かない行動に出るヤツだし?


でも二人は、


タトゥーのことより、タイガがキョウスケに電話を掛けてきた方のことが気にかかっているらしい。


家に帰りつくまで、二人は示し合わせたようにだんまりだった。


何だってんだよ。


あたしはタチバナのことを言おうと思ったけど、結局二人の意味深な沈黙に口を開けず。




―――変なもやもやを抱えたまま、深夜になりベッドにもぐりこんだ。


こうゆうときってヤなんだよなぁ。


また変な夢見たりしてサ。


キョウスケは夢にもちゃんと意味があるって言ったけど、


あたしにはそう思えないよ。


まあ多少不安要素が夢に現れるってのは考えられるケド。


……―――なんて考えながらいつの間にかうとうと…






身を刺すような冷気を感じて、あたしは瞼を開けた。


だって真夏だぜ?この寒さは一体何だってんだよ!


体を抱きしめて寒さから庇うようにゆっくりと目を開けて、あたしは思わず息を呑んだ。






「!?」




目の前に広がるのは真っ白な雪原。


白い雪の絨毯が敷かれていて、地平線の向こう側がぼんやりと滲んでいる。


ってか地平線って…はじめて見たよ…って現実じゃねぇしな。


夢だったら何でもアリだ。


上を見上げると、薄紫色の…まるでヴェールのようなオーロラが掛かっていて、あたしは目をまばたいた。


「―――…夢…に…しちゃ凝ってんな」


もうあれこれ驚いたりはしない。順応できる体になったってことだろうか。


今度は何を見るのか身構えて、それでもあまりの寒さに身を縮ませて辺りをきょろきょろ。


ちらちらと雪が舞っている。


その欠片を手のひらですくうと、ひんやりと冷たい感触がして、やがてその雪の欠片はあたしの手の中で溶けた。


…てか、寒さと言い冷たさと言い……


すっげぇリアルだな…




白い雪の絨毯の上に転々と一組の足跡が向こう側に続いていることに気付いて、あたしはその足跡を目で追いかけた。


動物の足跡じゃない。それは裸足の人間の足跡だった。


ちょっと自分の足跡をその横に残してみると、足の大きさと良い、歩幅と言い―――


それが男のものだと分かった。





舞い散る……






―――雪





この名前を持つ男はたった一人








雪斗―――……?







< 521 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop