。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「どうして雪斗……あんたに妹は居ないはず……それにあの子は…」
そのあとに続く言葉が思い浮かばなかった。
あの子は―――誰……?
頭の奥底では分かっている筈なのに、まるで舞い散る雪景色のようにその考えを滲ませている。
「どうして、か。
それはお前が望んだからだ―――」
雪斗は黒い瞳であたしをまっすぐに見据えて、ゆったりと言った。
は―――……?
「いや、別にあんたに会いたいとか思ってねぇし…」
思わずいつもの口調で呟いて、あたしは慌てて口をつぐんだ。
だけど雪斗は気を悪くした様子はないように、軽く笑った。
「相変わらずだな、お前は」
白いマントの裾がはためいて、ぞくりとあたしの体に悪寒が走る。
思わず肩を抱きしめて身をすくめると、雪斗は切なそうに笑った。
あたしの目に映る男は
きれいな人形じゃなくて―――やっぱり雪斗だ。
あの頃と変わらない―――
雪斗だ。
「嘘だよ。
会いたくないなんて嘘。
ホントはあたし―――雪斗が何をしようが、生きててほしかった。
って、今更遅いかもしれないけど…」