。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
雪斗は切なそうな瞳を揺らし、淡い笑みを浮かべていた口元を真顔に戻した。
苦しそうに眉を寄せると、目を伏せる。
長い睫が白い肌に落ちて、影を作る。
「俺は―――生きてお前に顔向けできる筈がない。
俺は―――…」
まるで悔いるように両手を見つめて、雪斗が唇を噛む。
「ねぇ、雪斗。あんた今どこに居るの?あんたが眠ってるところは……」
せめて雪斗の眠っている場所を知ることができたら、
供養ぐらいできるかもしれない。
変なの……
雪斗が生きてたときはあんなに憎くて、死ねばいいってずっと思ってたのに、
いざ手に掛けると―――あたしはやっぱり
後悔した。
「俺が眠っている場所―――か。
ここは冷たくて、寒い……日の当たらない深い場所―――」
雪斗は顔を上げてぼんやりと空を眺めた。
白い風景の中、黒い髪の先が風に揺れて―――生前の雪斗の
本来の美しさが浮かび上がる。
雪斗は長い睫を上下させてゆっくりとまばたきを繰り返すと、
「でも寂しくはない。俺の片割れ―――
琢磨がたまに会いにきてくれるから」
と空に向かってぽつりと呟いた。
「俺は地の龍。空を見上げれば、いつだって片割れを探すことができるんだ―――」
黄龍―――
あたしは心臓の辺りで拳をぎゅっと握った。
心臓が軋んだ音を立てた気がした。