。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
雪斗が安心したように目を細めてフードを被ると、ゆっくりと振り返った。
前を向いて歩き出し、あたしに背を向ける。
マントの裾が風でなびく。
雪斗の美しさを湛えるように、そのマントの裾ですら計算された美しい波を描く。
「…待って!待って、雪斗!!」
あたしが呼びかけると、雪斗はゆっくりと振り返った。
「雪斗―――あなたはあたしの血の繋がった叔父さんなの―――…?
ホントは母さんの弟…
叔父貴とは…」
「血の繋がりなんて関係ない」
雪斗はあたしの質問に被せるように冷たく言い放った。
「関係ないんだ。俺にとっては。お前はいつでも―――愛しい…愛しい
唯一無二の絶対的な存在だった。
血の繋がりがあってもなくても、俺のしたことは許されることじゃない」
―――雪斗……
「朔羅、俺を許すな。一生恨んで、恨んで―――憎みとおせ」
雪斗の言葉にあたしはゆっくりと首を横に振った。
「……それは…できそうにないよ…」
今までは、そう―――ずっと憎いと思ってた。
でも戒に出逢ったから。
あたしはすぐ隣に立っている戒の手をぎゅっと握った。
雪のように冷め切ったあたしの手を
こいつはいつだってあっためてくれた。
「戒に出逢ってこいつがあたしの汚い過去ごと受け止めてくれて、
いつも優しさで包んでくれたから、
愛することを―――教えてくれたから
あたしは前を進むことができたんだ」
だから今度はあたしがあんたを―――受け止める番。