。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「何だよ、心配って」
あたしが思わず苦笑を漏らすと、
戒はあたしの手を一層強くぎゅっと握って、
「心配に理由なんて必要ある?
俺のバイト中に、お前が居なくなって―――
もしかしたら何かあったんじゃ…
って思ったら俺、かっこわるいけど自分でもびっくりするぐらい動揺しちまって……」
戒が、「ははっ」と乾いた笑いを漏らして顔を伏せると、あたしの手に込める力をちょっと緩めた。
戒のあったかい体温が遠ざかっていって、あたしは慌てて戒の手を握り返した。
「大丈夫だよ、あたしはここに居る。
あたしこそ心配かけてごめんね」
ぎこちなくあたしは戒に笑いかけて、自分から戒に顔を近づけた。
おでこをこつんと合わせると、何だか急に気恥ずかしくなって、あたしはすぐに顔を離そうとしたけれど、
戒の手があたしの頬を撫で、引き寄せられる。
キス―――……
唇と唇が触れ合う瞬間、
「ちょっとごめん」戒は慌てて言って顔を背けると、「へグシュっ」と変な声で小さくくしゃみをした。
「大丈夫か?お前、体冷えてる…」
戒の腕に手を触れると、いつもよりも温度の低い戒の腕は僅かに鳥肌がたっていた。
またも鼻を啜りながら、
「あー…まぁなぁ。ってかお前いっつもこんな寒い中で寝てんのかよ」
と半目になって備え付けてあるエアコンを見上げる。
「お前が温度低めたんじゃねぇのかよ」あたしも思わず戒の視線を追ってエアコンを見上げると、
「さすがにそんな勝手なことしねぇって。すぐ帰るつもりだったし」
戒はホントにすぐ帰るつもりだったんだろう。
ってか、エアコン壊れた??
そう思って部屋の明かりをつけると、二人してリモコンの設定温度を覗き込んだ。