。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
結局「ゲンジャ」なるもののことをはっきりとは説明してくれずに、戒は逃げるように部屋に帰っていった。
何だって言うんだよ。
ってかあいつ、ぜってぇ何か隠してやがる。
ディテクティブごっこで探りを入れようかと思ったケド、この技はあいつに通じないだろうしな。
何せ相手は一枚も二枚も…ってか百枚も上手だ。
ってかこの技が通じた相手が未だにいないんだけどね。
なんっで、あたしの周りはみんな頭いい男ばっかりなんだよ!!
千里みたいに単純だったらいいのに!
ぎりぎりした思いで、結局その夜も
眠れなかった。
―――次の日も、あたしと戒はバイトのシフトが微妙に被らず家でもすれ違い。
キョウスケに聞こうかと思ったけど、あいつもバイトだし…
運が悪い。
叔父貴も知ってるのだろうか。
……知ってても、教えてはくれねぇだろうな。
みんな頭も良いけど、それ以上に秘密主義だぜ。ちくしょうめ。
―――だけど運は悪いだけじゃなかった。ツキが巡ってくるときは巡ってくるもんだな。
その日の夜、
「朔羅さ~ん、お夜食にホットケーキ作って♪」
とメガネの声で甘えてきた戒。
ホットケーキ…また面倒なものを…
「てかお前夕飯しっかり食ってたじゃねぇか。また食うんかよ!」
と言いつつも、戒に可愛い声でおねだりされると、にとことん弱いあたし…
ま、組のもんもこれから晩酌だと言ってつまみを探してたから、ついでに作ってやるか、
と軽い気持ちで台所に向かった。