。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「いつまでも隠せないと思ったから白状するケド。
ゲンジャってのは“玄武”の玄に蛇って字を書いて玄蛇。
文字通り玄武の人間ってことだ」
あたしはたまねぎの皮を剥いていた手を思わず止めた。
「玄武―――…?」
“蛇”って単語にドキリと反応する。
「四組織の中で最強と謳われた今は亡き殺し屋集団ですよ。
長い時代玄武を影から支えてきた集団らしいです」
殺し屋―――……?
「やっぱ病院で狙ってきたのはそいつってことか。でも今は亡きって……?」
あたしは再びたまねぎの皮を剥いた。
「病院で狙撃してきたヤツがそいつだと思うけど。玄蛇の存在は俺も響輔も知らなかった。
何せその一族はだいぶ前に滅びたみてぇだからな。
今はその一族は存在しない。噂に寄ると三十年前ぐれぇ前の話だからな、
俺らが産まれる前の話だ」
「その後、体制は代わり、入れ替わるように“黄龍”と言う存在が生まれました。
組織を統一するため、うまくできてますよ」
キョウスケはどこか納得顔で頷いて、同じようにたまねぎの皮を剥いている。
何かが滅び、そして新たな何かを生み出す。
それは時代の終焉と―――あたらしい時代のはじまり―――……
「まるでかごめの歌みてぇだな」
あたしはザクリとたまねぎを包丁で半分に切って、ぽつりと呟いた。
「本当や……
気付かんかった」
戒がボウルの中身を混ぜていた手を止めて、目をぱちぱち。
キョウスケも目を開いて、戒と顔を見合わせている。