。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
きもだめし!?
◆ きもだめし!? ◆
「どうしたんだろ、龍崎くん……」
「ちょっと怒ってる?関西弁だったし」
「でもワルっぽい龍崎くんも素敵♪」
と、戒とリコが立ち去ったあとに女子はひそひそ。
ちょっとワル…じゃなくて、あいつぁ極悪だ。
知らぬが仏ってこのことを言うのだろうか。
でも、どうしたんだろ。急に。
あいつは気分屋ってわけでもねぇし、急に意味もないところで怒ったりするヤツじゃないからな。
どこで不機嫌ポイントにスイッチが入ったのか謎だが、
ま、何か戒の癇に障ったんだろ。
と結論付けて、あたしも千里の元へ歩いていった。
―――
きもだめしは日が暮れてからはじまる。
クラスで男女ペアになって、一組一組時間を置いて回る。
ルールは簡単。スタンプラリーみたいにスタンプポイントでスタンプを押して、
最後のポイントで出口を教えてくれるって言う。
ありがちだけどな。
暗いし?
いかにもデそうな雰囲気に女の子は「キャ~」ってなって、そんでもってスタンプラリーを回ることで協力しあって
ありがちだけどそこで恋が芽生えて、この登校日を境にカップルが誕生するって話も多い。
あたしは「キャ~」なんて可愛い悲鳴をあげる女じゃないから、千里もその気になんないだろうけど、
でも戒とリコペアはどうなんだろう…
ちょっと心配…
照明を落として、暗闇に包まれた夜の学校。
見慣れたはずの学校が、急に違う風景に見えるから不思議だ。
ってか怖い…
どこで何が出てくるのか分からず、ドキドキ。
今更ながら、雪斗の夢を思い出しちまった…
幽霊ぽくなくて、それほど怖くなかったけど。今思い出すと、何かリアル。
「は、早くスタンプ押して出ようぜ!」
あたしは暗闇の中、非常灯の明かりを頼りにスタンプラリーの地図を覗き込んだ。
ちなみに今は一階の第二理科室の準備室の前。
「……ああ、うん」と千里は気のない返事。
くじを引いた瞬間あんなに喜んでたのに、何で急に静かになってんだよ。
訝しげに千里を見上げると、こっちを見ていた千里と思い切り視線が合った。
今更照れるような間柄じゃないってのに、あたしたちは顔を赤くして同じタイミングでぱっと顔を逸らした。
~チャリラ~♪
しかも、このものものしい幽霊屋敷と化した夜の学校に不釣合いな極妻のメロディが響いて、あたしたちは違う意味でびっくり。
「め、メールだ!」
慌ててケータイを取り出して苦笑い。
メールはマサからだった。なんてことない、夕飯の確認だ。
“まだ分かんないから先食ってて”と返信している最中、
千里があたしのケータイにぶら下がってる白へびさまのストラップにそっと手を伸ばしてきた。