。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
龍崎くんはちょっと虚をつかれたように目を開いて、唇を引き結んだ。
「…別に。この女大好きな俺さまが野郎のことなんて考えるわけないだろ?」
とそっけなく言ったけど、
「嘘つきだなぁ」
あたしが言って龍崎くんの横を通り過ぎると、龍崎くんはあたしのあとを慌てて追ってくる。
「嘘つきて?俺が?」
「そうだよ。嘘つきジャン。ホントは龍崎くんが一番朔羅とペアになりたかったんでしょ?」
ちょっと振り返って言うと、龍崎くんはまたも唇を尖らせてぷいと顔を背ける。
「朔羅はああ見えて怖がりだからさ~『キャー』とか言って龍崎くんに抱きついてくるよ、きっと」
意地悪そうに笑うと、
「あいつは『キャー』なんて可愛い悲鳴あげねぇよ。
『ギャーーっ!』とか『ぎぇええええ!』だ。
いつも思うけどあの悲鳴、何なんだろうな」
龍崎くんは軽く笑い声を上げて目を細める。
龍崎くん、朔羅のことを語るとき、すごく幸せそうに笑うんだね。
ホントは朔羅とペアになりたかったんだよね。
「龍崎くんてさ、いっつも大事なときに一歩下って、
ホントはその席を譲りたくないのに、その誰かに譲るよね」
あたしの言葉に龍崎くんは細めていた目を開いた。
響輔さんのときだってそう、叔父さまのときだってそう。
一歩下って席を譲る理由は―――
絶対的な自信があるからだろうか。
それ以外にも何かが―――…