。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「俺が一ノ瀬にペアを譲った理由だったよな。
そんなの簡単だ。朔羅の16年間を俺の我がままで奪いたくなかったからだよ」
16年間を―――奪いたくなかった……?
「今の朔羅があるのはさ、16年間育ててくれた琢磨さんのお陰。
小さい頃からあいつを支えてくれた一ノ瀬のお陰。
響輔が兄貴みたいにあいつを可愛がってくれたお陰。
あいつの優しさとか、正義感とか、まっすぐなとことか…そりゃ怒らせると怖いし口が悪けりゃ態度もでかいし、ちょっとおバカなとこもあるけど…
朔羅の全てをあいつらが創り上げたきたんだ。
それをたったいっとき俺が独占してぶち壊すのは、いけないよなー」
最後の方の呟きは誰に聞かせるわけでもなく、ほとんど独り言のように言った。
龍崎くんは―――…いっつも軽い感じがしたし、いつも不真面目そうだったし、いっつも何を考えてるのか分からないけど、
でも凄く―――朔羅のこと、好きなんだね。
「それともちろん、川上の存在も大きいよな。
あいつ、家でいっつもお前のこと楽しそうに喋ってんだぜ?
はじめて女の子の親友ができたみたいで、すっげぇ嬉しそうなんだ。
あいつのこと、支えてくれてサンキュ
な」
龍崎くんはにこにこ真正面からあたしを見ると、ぐしゃぐしゃと髪をまさぐってきた。
「ちょっ!やめてよー」
怒ったふりをしたけど、あたし龍崎くんの言葉がすごく嬉しかった。
朔羅―――いい人に
愛されてるんだね。