。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
あたしたちはその後はくだらない会話をして、暗い廊下を歩いていた。
第一ポイントの音楽室が近づくと頼りなげなピアノのメロディーが聞こえてきた。
~♪
脅かし役の誰かがピアノでも弾いているのだろうか…
かぼそいその旋律に、さすがのあたしもちょっと怖くなって龍崎くんの袖にしがみついて音楽室に入った。
音楽室には誰もいなくて、でもピアノの旋律だけがグランドピアノから聞こえてくる。
「は、早くスタンプ押して次行こう」
ちょっと震える声で龍崎くんを見上げると、
「何?怖くなっちゃった?
大丈夫だって♪俺がハグしてやる」
冗談で龍崎くんがぎゅっと抱きついてきて、
あたしは龍崎くんの腕の中で声にならない悲鳴を上げた。
次の瞬間…
「何すんのよ!変態っ」
バッチーン!
「ってー!!」
……
やって……しまった。
あたしは龍崎くんの頬を打った手のひらを見て唖然。
人生初の平手打ちが、まさかまさかのヤクザだったなんて。
それでも龍崎くんは気にした様子がなさそうで、打たれた頬を撫でながらも
「川上のパンチ効いたぜ~。悪ふざけが過ぎたみてぇだな。悪りい、悪りい♪」
と全然反省してなさそうに笑ってマイペースにグランドピアノの中をのぞいている。
まぁ…本気で怒られたらあたしきっと生きて帰れないと思うケド。
「ほら、川上見てみ。ピアノのメロディはこのスピーカーから流れてるぜ?」
しかも種明かしまでしてくれた。
さっき龍崎くんに抱きつかれてすっかり恐怖は吹き飛んでいったケド。
「それより早く次のポイント…」と言いかけたときだった。
暗がりから誰かの腕が伸びてきて引き寄せられると、あたしは口元を塞がれた。