。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



「まぁ、ここで話し合っててもしょうがないし、三人で行こうか」


龍崎くんは苦笑い。


「…いいの?」


新垣 エリナが潤んだ大きな目で龍崎くんを見上げる。


「女の子を一人こんなところに置いていけないし」


と紳士な龍崎くんの中身は実はド変態です。と新垣 エリナに言ってやりたい。


―――と言うわけで…あたしと龍崎くん、そして新垣 エリナと言う変な組み合わせで移動することになった。


お化け役の生徒から脅かされるたび「キャッ」と可愛い声を挙げて龍崎くんの袖にしがみつく新垣 エリナ。


あたしは元々怖がりじゃないし、全然平気だけど、新垣 エリナの行動が気になってつい目を吊り上げる。


間に挟まれた龍崎くんは居心地悪そうにこめかみの辺りを搔いて、


「こうなるって分かってたらかっこつけてないで、ペアを変わってもらえばよかったかな…」と弱音を吐いている。


「朔羅が相手だったらもっとややこしい状況になってるでしょうが」


またもあたしは小声で言うと、


「そーだよなぁ…」


と龍崎くんはがくりと肩を落とす。


「モテる男は辛いね」


嫌味たっぷりで言ってやると、


「か・わ・か・み(怒)」と口だけ動かして龍崎くんが睨んできた。


そんな感じで途中まで歩いてきたけれど、残り半分と言うところで




ピタリ





突如、龍崎くんが脚を止めた。


「どうしたの?」


いぶかしんで聞くと、龍崎くんは真剣な様子で目を開いてうっすらと口を開けた。






「朔羅?」







「え?朔羅がどうしたの?」


「朔羅が泣いてる……」



ぽつりと呟いて、龍崎くんは踵を返した。










< 591 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop