。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
俺の胸にまともに降りてきて、俺も新垣 エリナを抱き止める形になった。
「キャァ!ごめんなさい!」
新垣 エリナが慌てて体を離す。
しかし慌てて体を離したからか、その反動で
場の悪い階段でバランスを崩し、ステップを踏み外した。
「ぅわ!」
「キャァ!!」
俺たちは抱き合ったまま階下に転がった。
踏み外したのは2、3段ほど。
普通ならこんなミスしないけどな。状況が状況なだけに油断してたってのもある。
ガシャン!!
バシャンッ!
踊り場の隅に置いてあった非常用の消火バケツにまともに頭を打ち、中に入っていた水をぶちまけた。
俺は新垣 エリナを抱きかかえたまま天井を見上げ、
び……くりした!!
階段を後ろ向きで転げ落ちるってのは初体験だ。意外に怖ぇもんだな。
ドキドキして目を開いてると、
俺の上にのったままの新垣 エリナは恐怖からか俺の襟をぎゅっと掴んだまま、ぎゅっと強く目を閉じていた。
良かった。どうやら彼女は無事みたいだ。
消火バケツから零れた水が床を伝い、俺の頭や背中を冷たく濡らす。
「冷て…」
思わず眉をしかめて俺は新垣 エリナの二の腕を掴み、腹筋で起き上がると頭を軽く振った。
水の雫が当たりに巻き散る。
「……ご、ごめんなさい!!龍崎くんどこか打った!?」
新垣 エリナが顔を青くして慌てる。
「いや…大丈夫。新垣さんこそ大丈夫?」
「う、うん。龍崎くんが庇ってくれたおかげであたしは…」
その答えに、再びほっと安堵。
「暗いから気をつけて」
俺は立ち上がり、新垣 エリナの手を掴んで引き上げると新垣 エリナは申し訳無さそうに…口元に手をやり立ち上がった。
「ごめんなさい」
またも蚊のなくような小さな声で言って、
「いいって。気にしないで。ほら、行こう」
俺は何でもないように言って、歩き出した。
「待って。龍崎くん濡れてる」
新垣 エリナがごそごそ動いて俺に駆け寄った。
「このハンカチで拭いて?……」
そう言い終らないうちに、新垣 エリナが息を呑んだ気配があった。