。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。




廊下の踊り場には小さな窓があってそこから月の明かりが怖いぐらいの蒼い輝きを放って


階段を照らし出していた。


風が止んで雲が切れたってのもある。


踊り場に俺と新垣 エリナの黒い影が落ちていて、


階下まで伸びていた。


俺は言葉を飲み込んだ新垣 エリナに、顔だけを振り向かせて怪訝そうに見た。


新垣 エリナはハンカチを握ったままの手を宙ぶらりんにさせたまま、目を開いて硬直している。


まるで幽霊にでも遭遇したかのように驚いたまま表情を固まらせ、


「どうかした?」


怪訝に思って聞くと、







「龍崎くん





背中のそれ―――」





震える指で背中を指差されて、



ここにきて俺もようやく事態が飲み込めた。



今日は遅刻しそうだったから、慌てて制服を着たんだ。


白いシャツだけど透ける素材じゃないし、だから気が抜けてたんだろう。


シャツの下にタンクトップやTシャツの類いを着ていないことに今更ながら気付いた。


消火バケツの水は背中まで伝っていたわけで


つまりは俺の背中の









代紋が





透けてるってこと。










やべぇ。







どないしよ。






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