。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「それより龍崎くん、マドンナ新垣 エリナの方はどうするつもり??」
握ったシャーペンの先を戒に向けてリコが心配そうに聞く。
「そうだよな~…その問題もあった。
お前どうするつもりだよ」あたしもちらりと戒を見ると、
「まぁ相手がヤクザだから。
あの子も不用意にぺらぺら何かを喋ることもないだろうけど」
「いかにもか弱そうだし?
何かを仕掛けてくるような女には見えねぇがな」
あたしもムーと唸って尖らせた唇の上にシャーペンを乗せる。
「……そうかな。早く手を打ったほうがいいと思うけど?」
でもリコだけは違う意見なようで、考えるように視線を逸らすとぽつりと呟いた。
「前から思ってたけどさー、川上…新垣 エリナが嫌いなんか?」
戒が興味深そうに身を乗り出した。
戒……芸能人のゴシップネタのワイドショーに食いつく主婦みたいな顔してんぞ。
でも、あたしもその隣で目をぱちぱち。
確かに。
リコってそれほどはっきりと好き嫌いないし、今まで特定の誰かの悪口を聞いたことがないってのに。
ちなみにあたしは好きか嫌いかと聞かれても即答できるほどマドンナのこと知らない。
「……前に一度見たの」
リコは観念したように吐息をつくと肩をちょっとすくめた。
「「見た??って何を」」
あたしと戒の声がかぶってあたしたちは顔を見合わせた。
「人のこうゆうこと言うのって気が引けるんだけど。
なんか~年上のサラリーマンぽい男の人の車に乗ってるのをさ…」
年上のサラリーマン……?
「兄ちゃんとかじゃねぇの?」戒はそれほど気にしてないように軽く笑って、
「何だ、そんなこと」と言ってちょっとつまらなさそうに唇を尖らせる。
「……違うよ。だって車の中でき……」
そこまで言ってリコは口を噤んだ。
「「き??」」
またもあたしと戒は声を揃えてリコを振り返る。
リコはちょっと考えるように視線を逸らしてたけど、
あたしたちが揃って身を乗り出したからさすがに逃げられないと思ったのか諦めたように吐息をついた。
「―――キス……してたの。
その大人の男の人と」