。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「なぁ千里……この白へびさまのストラップだけどさぁ」
あたしはギプスに落書きしようとしていた手を止めて、千里を見た。
そのときだった。
ガラッ
病室の引き戸を開ける音がして
「あら、朔羅ちゃん。リコちゃんも。千里のお見舞いに来てくれたの?」
千里ママが登場した。
「「お邪魔してます♪」」
あたしたちは揃って挨拶をして、千里ママはにこにこ。
「ありがとうね。もう、この子ったらホントドジで。誰に似たんだか」
とすぐに苦笑いに変える。
「まぁ大ごとにならなくて良かったけれど」
アキレス腱断裂だから結構おおごとだぞ?と思いながらも、あたしが怪我させた張本人だから何も言えず。
「残りの夏休み、大人しくしてなさいね」千里ママは腕を組んで、ため息。
「うるっせぇな。分かってるよ」
千里は鬱陶しそうに反抗して手をひらひら。
まぁいつものことだからあたしも千里ママも気にしてないけど。
ってか母親と息子ってこんな感じか。戒んとこもそうだし。
あそこも超絶仲が悪いしな。
二人とも迫力ある美形だから、喧嘩もハンパないし。って考えが逸れてる逸れてる。
慌てて顔を戻すと、
「おばちゃん、こないだ千里から白へびさまのストラップもらいました。ありがとうございました」
「あ、あたしもありがとうございます♪」
あたしとリコが千里ママを見ると、千里ママはまたもにこにこ。
「あら~いいのよ。千里ってばお土産のセンスないからどうかと思ったけれど、気に入ってくれたのなら良かったわ」
「センスねぇってはっきり言うなよ!買ったのは俺だ!」
またも千里がブチッ。
そんな不機嫌千里を、千里ママは全然気にしてないようににこにこ笑顔をあたしたちに向ける。
千里ママはあたしたちを実の娘のように可愛がってくれるんだ。
普段家ではどっちがヤクザか分かんないような強面の刑事のおっちゃん(夫)と、可愛げない息子に囲まれてるからな~
どうやら千里ママは娘がほしかったらしい。鈴音姐さん(戒ママ)みたいだ。
「ねぇ朔羅ちゃん、リコちゃんどちらかうちの千里のお嫁さんに来てくれない?」
と良く聞かれるが、あたしたちは揃って首を横に振る。