。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
テレビドラマやマンガの探偵はぽんぽんヒントが出てきて、あっという間に解決できるってのに…
やっぱ現実はそうにもいかないみたいだ。
そもそもその二つの名前も偽名かもしれないし。
「昔はストラップじゃなくてキーホルダーだったのよ。
“かごめ神社”の白へびさまキーホルダーは恋のおまもりでもあってねぇ」
千里ママが楽しそうにリコに話しているのを聞いて、あたしは目を開いた。
「“かごめ神社”!?」
思わず勢い込むと、千里ママがびっくりしたように目をまばたき少しだけ体をそらした。
「ええ、そうよ。かごめ神社」
もう一度復唱して、それでも千里ママは怪訝そうな顔。
「それって、昔からあるんですか?」
思わず聞くと、
「ええ、私の生まれるもうずっと前から…詳しくは知らないけれど五十年は経ってるとは思うわよ…?」
“かごめ神社”
偶然……!?
「お、おい…朔羅、やっぱ今日のお前変だぜ…」
千里が心配そうに聞いてきたけれど、あたしは上の空。
「昔、私がまだ小学生低学年のときねぇ。同級生に好きな人がいたのよ。
彼は爽やかでかっこよくて、みんなの憧れの王子さま的な存在だったわ」
あたしがぼんやりしている隣で千里ママはリコに話しかけている。
「親のそうゆう話しって聞きたくねぇよ…な、朔羅?」
また千里に聞かれて、あたしは曖昧に頷いた。
「へ~♪王子さま☆好きです!そうゆう話!」
リコだけが千里ママの昔話に聞き入っている。
「でしょー?私もその子に片想いしてて、かごめ神社でキーホルダーを買ったのよ」
「それで効果の程は?」
「そのときはあんまりなかったわ。その子ねぇ、妹さんに不幸があって……
小さな町だったからすぐに噂が広まったけれど、どうやら神社の池で溺れたみたいなの。
冬は氷点下30度近く下がる気候でしょ?池の水が凍ってて、その子はその中に…」
「…亡くなってたんですか…」
リコが神妙な面持ちで頷いている。
「ええ。きっと池を覗き込んで足を滑らせたのね。その数日前から行方不明の捜索願が出されてたんだけど残念なことに…
仲の良い兄妹だったから、それはその子も悲しんでね…いたたまれなかったんでしょうね」
「ロマンチックな神社なのに、何だかかわいそうですね…」
千里ママは女の子と喋れるのがよっぽど嬉しいのか、そのお喋りは止まらない。
あたしはその会話をぼんやりと聞き入れて、
でもずっと
“かごめ神社”のことを気にしていた。