。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「でもね、今年千里が買ってたついでに私も買ってみたのよ。
そしたら何と!こないだその片想いしてた彼と偶然ばったり再会したの♪
この東京で」
「へぇ!ドラマみたい」リコが目を輝かせる。
「でしょ~?『さっちゃん?(さちえ:おばちゃんの名前)』て声掛けられて。
最初ナンパかと思ったけど、こんなおばちゃんナンパするわけないしね~」
あはは、とおばちゃんは明るく笑う。
「おかんをナンパする野郎なんてどこのどいつだよ。そいつ目ン球腐ってんじゃねぇの?」
そんな千里をおばちゃんは軽くはたき、
「だからナンパじゃなかったって言ったでしょ?」ちょっと目を吊り上げた。
それでもすぐにうっとりと頬を緩ませる。
「もう三十年以上経ってたけど、その子すっごくかっこよく成長しててね~
背も高くなったし声も大人っぽく変わってたわ。当然だけど。
高そうなスーツ着てて、今は税理士?会計士??どっちって言ったっけ…
とにかくそうゆうエリートに育ってたわけよ♪
まぁ頭が良い子だったからね。当然よネ。
旦那なんて、くたびれたスーツよ?かっこよくないし。ヤクザみたいな顔してるし
ちなみにその初恋の彼、縁がなくて未だ独身だとか♪」
キャ♪千里ママは嬉しそうに手を組み、
「いやいやおかん…あんた結婚してんだろ」と千里が冷静な突っ込み。
「へぇ、初恋の人がエリート。ステキ…」
と、言い掛けたリコが両腕を抱いて軽く撫でさすり小さくくしゃみをした。
「どした?」あたしが聞くと、
「ううん。何だか急に悪寒が…風邪でもひいたかな?」とリコは顔をしかめる。
「三十年前に妹さんを亡くしたけど、その悲しみから立ち直って今はすごく元気そうだったわ。
時が経ったっていうのに、その子ちっとも老けてなくてね。
私なんてほら、千里産んで旦那のお世話ですっかりくたびれたおばちゃんよ。
私が刑事と結婚した、って言ったらびっくりされちゃったわ」
千里ママは苦笑い。
「おばちゃんはまだ若いですよ。優しくて可愛いし」
ホントのことを言うと、
「やだ~朔羅ちゃんてバ☆是非、うちの千里のお嫁さんに
私が新しいママになるわ」
と、どこかで聞いたような台詞。
そうだ、戒ママの鈴音姐さんだ……
どうやらあたし…この年代のお姉さま方からモテるみたい…
結局千里ママはその初恋の人と再会した話をそれから三十分ほど続けて、
あたしはバイトもあったし途中で抜け出した。