。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「あんた響輔のパパもマークしてたの?」
あたしがちょっとだけ目を吊り上げると、
「当たり前じゃないか。東と西の協定だよ?規模の大きさは計り知れない」
玄蛇はさらりと答える。
「特に白虎会長の虎間 道惨(トラマ ドウザン)と、鷹雄 耀司(タカオ ヨウジ)は要注意人物だ。
こちらで言う龍崎 琢磨と鴇田と同じ位置に居ると言っても過言じゃない」
「それで、あたしに響輔パパのことをあいつに探り入れろって言いたいわけ?生憎だけどあたしもそんなに暇じゃないの。
あたしが調べられることだったらあんたはとっくに知ってるでしょ。
悪いわね」
冷たく言ってあたしは玄蛇に背を向けた。
後ろ向きでビスチェのホックを外そうとする。
体にフィットするビスチェにかなり締め付けられてて苦しかったのよ。
鏡の中で玄蛇が腕を組んで壁にもたれかかったまま笑みを浮かべていて、あたしは顔をしかめて顔だけを振り返えらせた。
「ああ、気にしないで着替えを続けたまえ。私は君の着替えを見ても欲情などしないから安心してくれ。
誘惑しているのなら別だけどね」
「あたしがあんたを誘惑するわけないじゃない。そのバイタリティーがあるのなら響輔に行くわ」
ふんと鼻を鳴らすと、
「まぁその格好はかなり刺激的だろうがね、生憎だが響輔は女王様に苛められて愉しむような性癖の持ち主ではなさそうだ。
無気力そうに見えてあのタイプは支配されることより、支配することを好む」
「随分分かったような口利くじゃない」
まぁ当たらずとも遠からずって感じだ。響輔はあたしに意地悪なこと言って楽しんでる節があったから。
好きな子を苛めて気を引くってタイプじゃないだろうケド。
てか単にあたしが嫌いなんだろうけどね…
考えてズーン。気落ちしていると…
「もし“その場”がきたらどちらが“上”になるかでまた喧嘩になりそうじゃないかい?」
玄蛇は下品な笑いを浮かべて肩をすくめる。
…………
『あたしが上になるの!』
『はぁ?女に襲われる趣味なんてあらへん。襲う方がええに決まってるやん』
ベッドの上で言い合いをするあたしたち。
結局
『萎えたワ』そう不機嫌そうに背中を向ける響輔。
…玄蛇の言う通り、その様子が簡単に想像できてあたしは額に手を当てた。
それでも、すぐに気を取り直して忌々しそうに近くにあった手鏡を投げつけてやった。
玄蛇はそれをあっさり避けると、空中で器用にキャッチ。
「下品な想像しないでよ」
あたしが玄蛇を睨むと、玄蛇はまたもにやりと不敵に笑い、でもそれ以上何かを言ってくることはなかった。