。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「響輔は今日バイトが休みだ。午前中はどこかに出かけていたようだが、少し前に戻ってきたよ。
組員が数名残ってはいるが、虎間 戒と、龍崎 朔羅は夫婦揃ってバイトだ。しばらく帰ってこないから安心したまえ。
若い夫婦は共働きで大変だね♪」
玄蛇は茶化すように笑ってあたしはうんざり。
「あたしをヤクザの本家に送るつもり?」
「鴇田のところで慣れてるだろう?
あそこより若干血の気が多そうだが、君のような女にいきなり襲い掛かってくる無粋な輩は居ない。
龍崎 琢磨の教育が行き届いてると見えるね」
「そんなことどうでもいいわよ」
あたしはそっけなく言ってバッグを引っつかんだ。
さっきの言葉が引っかかる。玄蛇の狙いはやっぱり―――
朔羅。
でも今は確認する余裕などないし、そもそもあの子が玄蛇の餌食になろうが知ったこっちゃない。
でもそれは―――響輔を―――傷つけることになるのだろうか。
握ったバッグのハンドルで響輔がくれたテディがちょっと揺れた。
そんな考えを振り払うように軽く頭を振って、
「じゃあね、迎えはいらないから」あたしはそっけなくドアを閉めた。
「ああ、宜しく頼むよ♪」
玄蛇は楽しそうに笑って車はすぐに行ってしまった。
「さて…と」
あたしは木の表札に書かれた“龍崎組”の毛筆体を見て目を細めた。
玄蛇に協力するつもりはないけど、
響輔がどんな場所で生活してるのかは興味がある。
と言うか…
単に響輔に会いたかっただけ。