。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
何だか変なことになったな。
あたしは虎間 戒が持ってきてくれたアイスを口に入れながら、目の前の二人を眺めた。
響輔も虎間 戒もそろってアイスを口にして、虎間 戒にいたってはアイス以上の甘い笑顔でご機嫌。
やっぱりタイプなだけあって可愛いし。
見目麗しい美形二人の男を目の前にしてるってのに…
「あんた今度は何企んでるんだ?」
とアイスを食べ終わった虎間 戒が探るように目を細めて、あたしはちょっと肩をすくめてみせた。
「見たまんまよ。響輔を誘惑しにきたの」
「誘惑!?」
虎間 戒はカっと目を開いて、その迫力にあたしは思わず後ずさり。
…な、何よ。
『響輔に手ぇ出すんじゃねぇ!』ってまた怒鳴られるかと思ったけれど、
「……羨ましいぜ」
ぼそりと呟く虎間 戒。
「ステキな格好してるしな♪目の保養になるぜ♪」
「戒さん、お嬢にチクりますよ」
響輔は白い目。
「ねぇ、あんたこうゆう格好好きなの?」ちょっと身を乗り出して虎間 戒に聞くと、
「そらねぇ♪男の子やし?大・好・き☆」
にこにこそう答えて視線はあたしの胸元へ。視線がいやらしい。
「響輔…据え膳食わぬは男の恥言うやないか。一発かましとけ?朔羅には黙っておくさかい」
虎間 戒はケケケと笑って響輔の肘を小突く。
「あら、黙ってなくてもいいのよ?♪それともあんたが一発かましたいんじゃない?」
網タイツのつま先で虎間 戒の顎をなぞると、虎間 戒はやんわりとあたしの脚を戻した。
「随分魅力的な“あんよ”だが、遠慮しとく。
俺の嫁は猟奇的だから~」
あっさり言って、でも響輔よりスマートにあたしの誘いをスルーする。
可愛い顔して、随分慣れた仕草だった。
最初っからこいつの中であたしはナシってことね。
ふん、いいわよ。
「勘違いせんといて~俺、めっちゃ好みなんやで?せやかて愛する嫁が居るからな」
虎間 戒がずいと迫ってきて、今度はあたしの方が引き腰。
そんな虎間 戒をあたしから引きはがすと、
「好みなのは間違いあらへんで。あんたはこの人のドストライクやから。
あんたも気ぃつけえ。油断してると狩られるで」
狩られるって……
ちょっと目をぱちぱちさせて二人を見ると、虎間 戒は顎に手を当てながら口の端を妖しく吊り上げた。
それはさっきの冗談っぽい笑顔じゃなかった。
「虎狩り、鷹狩りを考えてる前に、あんた自分の身の心配せえ。
ここは龍の本拠地や」
虎間 戒がちょっと身を乗り出してあたしの顎の先を捉える。
「“一結狩り”って言うゲームはどうや?
面白そうやと思わへん?」
すぐ間近に迫った顔がにやりと不気味に笑みを浮かべ、
「響輔」
虎間 戒が短く目配せすると響輔は無言で立ち上がった。
何をするのかと思いきや、響輔は襖の向こう側を気にするように耳をそばだてて襖の前で腕を組んだ。