。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
二人の雰囲気が急にがらりと変わり、険悪な何かを帯びた。
ついさっきまで和やかだったって言うのに…何…?
虎間の眼は鋭い光を湛えていて、それがおふざけや冗談だとは到底思えなかった。
あたしの背中に何かが伝い、とっさに危険と判断したあたしが悲鳴をあげようとしたときだった。
声を出せないように虎間が大きな力強い手であたしの口を塞ぐ。
「前回はへましたけどなぁ、今は弱み握られてへんから。
言うたやろ?俺は響輔のように甘ないて」
低く言われてあたしが目を上げると同時だった。
前触れもなく床に倒されて、冷たい畳の感触を背中に感じた。
顔を上げると虎間 戒の琥珀色の瞳が目についた。淡い水晶体に金色の光が一筋浮かび上がっている。
鋭い牙を剥き、たった一振りで体を引き裂くような爪を向けた、
それは獰猛で残忍な獣、「虎」―――
あたしは目をまばたいた。
「もう一度聞く。
ほんまは何しに来たんや」
虎間の問いかけに、あたしは口を塞がれて声も出せないまま入り口に立っている響輔におずおずと目を向けた。
響輔は無表情にこちらを眺めていて、変わらず腕を組んでいる。
響輔―――……
助けを求めるつもりで目を向けたけれど、響輔は最初から虎間側―――
あたしが何かを答えようとすると虎間がちょっとだけ手を緩めてくれた。
「……白虎会会長と…その幹部が行方をくらましたって…」
みっともないほど恐怖で震える声で何とか答えると、
「親父が?」
虎間戒は眼を細めた。
「俺の親父もですよ」響輔も答える。
その顔に―――感情は感じられなかった。
いつも無表情だけど、今日はいつもより
冷たく感じる。
「り…理由は分からない。玄蛇も足取りをつかめてないって…」
あたしが状況を説明すると、二人は顔を合わせて訝しそうに眉をひそめた。