。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「それを探りに来たってわけか?」
虎間戒に聞かれてあたしは目をまばたいた。
「響輔に近づいて二重スパイたぁとんだ女狐やな」
「…に、二重スパイなんてそんなつもりなんてないわ!」
あたしが何とか答えると、
女狐呼ばわりされたことにちょっとムカっときて、あたしは虎間を睨みあげた。
「あ、あたしの目的は響輔に会いにきたことよ。
白虎会の報告はついでよ」
そっけなく言い終わらないうちに虎間はあたしの反撃の言葉を聞かずして、あたしの首を掴んだ。
あまりにも素早いその素振りにまばたきすらできなかった。
目を開いて目の前の虎間 戒を凝視すると、虎間は乱暴な手付きとは反対にとろけるような甘い笑顔でにっこり。
その笑顔に一瞬だけ気を緩めたけれど、次の瞬間虎間 戒は驚くほど視線を険しくさせて眉間に皺を刻んだ。
「男舐めんのも大概にしろやぁ!」
ドスを含んだ声。かなりの迫力と威圧を湛えていてそれは普通の男子高生が発する声ではなかった。
「ここがどこだか分かっとるんか!」
思わずビクリ、と体が硬直して
「ここには俺みたいな男がわんさかおる。
響輔は例外や。
あんたなんて抵抗もできずあっけなくやられるんやで?
輪姦されてボロボロにされるだけならまだしも、命の危機やってある!
命が惜しかったらな、
一人でこんなところ簡単に来るなや!!」
虎間の怒鳴り声をあたしは目を開いて聞いた。
一言一言に怒気をはらんでいて、さっきとは違う恐怖が背中をじわりじわりと寝食する。
鴇田もよく怒るけど、それ以上の迫力に
あたしはみっともなく震えていた。小刻みに震えるあたしに気付いたのか
「ちっ」
虎間は小さく舌打ちして体を起こした。
「俺やったら簡単に女を敵陣に送り込んだりせえへん。スネークの野郎、何考えてやがる」
「戒さん……もうええでしょ?ほら、一結も」
響輔がちょっと眉を下げてあたしの元に屈みこみ、あたしの腕を取ると起き上がらせてくれた。
いつもよりあったかいその温度。
力強いけど虎間とは違うその感触。
あたしはすごく安心して
「響輔っ!」
思わず響輔に抱きついた。