。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
新垣 エリナは最初のうち、
「自分で貼れるから大丈夫!」と慌てていたが、俺はその手を制して新垣 エリナの足首を掴んだ。
黒いハイソックスを脱いだ新垣 エリナの足首は白くてほっそりと、華奢だった。
俺のシャツに移ったピンクのグロスと同じような色合いのペディキュアがきれいに足の爪に乗っている。
その白い足首に浮かんだ赤い靴擦れの跡が余計に痛々しい。
「血出てんじゃん。ったく、我慢してんじゃねぇよ」
俺の本性バレてるからな。
今更取り繕うことなく俺は素で新垣 エリナを見上げた。
「…うん。ごめんね。迷惑掛けて…龍崎くん、
ヤクザさんなのに優しいね」
「優しくなんてないよ?てかヤクザは人情に厚いんだぜ?」
ははっと笑ったが、俺の笑顔が変な風に固まった。
「―――…やっぱ…ヤクザやって気付いてたん?」
固まったままの表情で探るように聞くと、
「まぁ…さすがにあの刺青見たらね…」と新垣 エリナは言葉を濁した。
何か言葉を探すように口元に手をあて、
「…龍崎さんも知ってるの…?」と聞いてきた。
「…あーまぁね~」と俺も曖昧に返事をしたが
あいつこそ、極道本家のお嬢だとは
さすがに俺の口からは言えないが。
「……お…おうちの人がヤクザさんなの?」
新垣 エリナは恐々…それでも興味深そうに聞いてくる。
紋も見られたし?今更いい訳するのも無理だと踏んで、俺は素直に白状した。
「うちが極道一家やねん。実家は大阪やけどな。
わけあって今は龍崎家に居候してる。
そのわけっつうのは今は話せんけど、
極道であること今は周りに知られるわけにはいかんねん」
俺はちょっと力を入れて新垣 エリナの足首をぎゅっと握って笑顔で新垣 エリナを見上げると、
新垣 エリナはわずかに顔をしかめた。
靴擦れの痛みに表情を歪めたわけじゃなく、それは俺の無言の圧力に恐怖を感じたからに違いない。