。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
締め切った部屋。
窓のブラインドも全部下ろして、照明も付けず楕円形のテーブルに並んだ四台の大きなデスクトップ型のパソコンモニタだけが青白い光を放っていた。
四方を囲むようにして置かれたパソコンモニタ。
俺はその中央、一台のパソコンの前に座りテーブルに肘をついた。
時間を見計らったように一台のパソコンに映像がパっと映る。
『あら、一番乗りみたいね』
と物腰も柔らかく笑った
―――彩芽の映像を見て、俺は目を細めた。
「あんたの“後輩”は時間に遅れないだろうな」
俺が彩芽のモニタに聞くと、
彩芽はそれには何も答えず軽く肩をすくめてみただけだ。
「さあ?」と語っているようだ。
そのときだった。
三台のうちの一台にパっとまた違う映像が映し出された。
『お久しぶりですね、龍崎はん。
お電話では何度かお話しさせていただいていますが、こうやってお会いするのははじめてや。
お目に掛かれて光栄ですよ』
黒いスーツ姿の…俺より二十以上も年上の、一見して品のある紳士風の男が映し出された。
話し方は上品だが、独特の威圧感を感じる。
長い脚を組みながら、男がタバコを口に含む。
すぐさま隣から同じ色のスーツの袖が映り、男のタバコの先に火を灯した。
随分余裕の態度だ。年の功か?
そして、彼が居るそこは一体どこなんだろうか。
周りの音はほとんどしない。とても静かで、彼が連れているのだろう男たちの話し声があちこちで聞こえる。
見た感じ彼の部屋―――事務所ではないようだ。
「私も光栄ですよ。ところであなた方は今どちらに?」
俺が手を組んで男を見探るように据えると、
男は長々と煙を吐き、前方を目配せ。
モニタの手前からもう一人男の背が映った。
狭い通路を歩いているのだろうか、男が歩いてきて最初に男の背もたれに手をつき何事か呟き、
通路を挟んで背を向けていた男が腰を降ろした。
黒い艶やかな髪をきちんとセットしてあって切れ長の目が印象的な二枚目だ。
こちらも俺より年齢が上だ。
最初の男と同じようにタバコを口にすると、またも別の方向から手が伸びてきて、タバコの先に火を灯す。
『お初にお目に掛かりますね龍崎はん』
男は低く笑い、ちらりと横を見やる。
『今は、そうですね。静岡あたりかな。富士山が見える。
“一富士、二鷹、三なすび”ってね。今ここで足りないのは茄子ぐらいですかね。
正月に私の倅があなたに麻婆茄子を馳走してもろたようで。
その節はどうも』
俺は思わず苦笑。
まったく食えない。男の倅と負けず劣らず苦手なタイプだ。