。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
静岡…
新大阪と東京とを行き来する間に通る。
「なるほど新幹線か。考えましたね」
俺が低く笑うと、
『グリーン車の一車両を貸切にした。
女たちは隣の車両で、ガードをつけてあるのでお気になさらず。
移動中の新幹線の中やったらさすがのスネークのヤツも逆探知でけへんでしょう?』
最初の紳士風な男が低く笑った。笑うと五歳ほど若く見える。
その笑顔が、その親しみのある関西弁が―――
あのこざかしいクソガキに重なる。
やはり“血”か―――
「まさに最高の“会議場”だな。
スクランブルを」
ヘッドホンマイクを俺が掛けると、二人も揃ってヘッドホンを頭に掛けた。
『ヨウ、※スクランブルだ』
紳士風の男が“ヨウ”と呼ばれた…通路を挟んだ黒髪の男に目配せする。
※スクランブル…音声や映像を電波伝送するとき、傍受を防ぐために、特定の復調装置でしか内容がわからないように信号電波を攪乱(かくらん)することです。
男は無言で膝に広げたパソコンを操りだした。
「彩芽、あんたもスクランブルだ」
もう一台…繋がったままの彩芽の方を見ると、今まで黙って俺たちの会話を聞いていた彩芽が
『了解しました』と小さく頷いた。
『龍崎会長、先ほどから気になっていたのですがこちらの女性は?』
と黒髪の男が目を細める。
目の形なんか息子のそれと似ているが、目つきばかりは違う。
目の端が妖しく光った気がした。
「彼女はネズミの一匹ですよ。手は出さないでくださいよ」
俺の念押しするような言葉に男たちは二人揃って目を開いた。
「意外でしたか?女だとは」
『こう見えてもあなたたちのような男の相手に慣れてるんですよ?』
彩芽はどこか楽しそうに笑って手をひらひらさせている。
『龍崎さんも水臭いですわね、こんないい男二人と知り合いだったなんて』
慣れてる…と言うだけはある。
ここにきてまでも冗談とか。
俺は苦笑い。モニターの男たちも笑い声を上げている。
『なるほど、気の強そうなお嬢さんや』
「お二方、この女を怒らせない方が懸命ですよ?痛い目を見る」
『近づくのは危険そうや。美しい薔薇には棘があるて言いますしね』
黒髪の男がどこか楽しそうに笑って形の良い顎をひとなぞり。
ホントに…“息子”と血が繋がっているのか疑いたくなるようなフェミニストっぷりだな。