。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
しかし…
キョウスケとの会話でちょっとスッキリしたって言うか…
ゴローの話が強烈過ぎて、あたしが悩んでることがバカらしくなった。
考えたらゴローは浮気一つで生死を彷徨っていたのに(しかも二回!)
それに比べりゃあたしのなんてまだ可愛いほうだよな。
まぁ戒が浮気してたら問答無用で東京湾行きだけどな!
息の根止めてやる!
と鼻息も荒く食事をしていると、
「ただいま戻りましたー」と戒が帰ってきた。
すでに賑やかな食事を繰り広げていた野郎共が
「オットメごくろうさん。シャバの空気はうまいか?」と冗談を飛ばしている。
戒はいつもの元気な表情ではなく、どことなく疲れを滲ませて登場したが、あたしを見ると無理やり笑顔を浮かべる。
「ナカ(刑務所の中)の臭い飯はうんざりでしたよ。
僕の放免祝い(刑務所づとめをつとめあげた人間の出所祝い)ですか?」
「お、おぅ。おめえ変な言葉知ってんな」←(全部ヤクザ用語です)
組員たちはちょっと驚いたように目を丸めていた。
まぁこいつらは戒が未だにカタギだと信じてるふしがあるからな。
だが騙されるな!こいつはこんな可愛いなりして、正真正銘に極悪ヤクザだ!
「今日の晩御飯は何~?」
戒はご機嫌に聞いてきて、もはや定位置になってるあたしの隣に素早く腰掛けてくる。
「見りゃ分かんだろ?」
とあたしの不機嫌にも堪えず、「いただきます」と手を合わせて
さっき煮込んでいた“タマネギのコンソメ煮(和風醤油マヨソース掛け)を一口サイズに切り分けると、一口ぱくり。
だけど口に入れた瞬間
「かっ―――!!!」
戒は一言叫んで鼻をつまみ涙目。
どうやら隠し味に入れたわさびの量がハンパなかったようだ。
全然隠されてない。前面に出ているようだ。
は…?もしかして…
あたしがそろりとキョウスケの方を見ると、
「ふっ」
遠くの方でキョウスケがしたり顔でにやり。
辛いの大好き!な戒でも悶絶するような殺人的なわさびの量を入れたのはキョウスケに違いない。
あだ討ちしてくれてちょっとすっきり…
したけど、
「み、水っっっ!!」
と鼻をつまみながら涙目になっている戒がちょっと不憫になった。