。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「ちょっと考えさせて?」
俺は苦笑いで腰にタオルを巻きつけると、
響輔は「とりあえずは分かりました」と言った感じでドライヤーのスイッチを切った。
「ですが返答次第では、永遠の眠りについてもらいますよ」
響輔がボキリと手の関節を鳴らして、俺は首を項垂れた。
鏡の中で顔を拭って、
「朔羅から何か聞いたん?あいつがお前に相談したんか?」
俺はおずおずと聞いてみた。
「お嬢は隠していましたがね、俺が誘導尋問したらあっさり引っかかりました」
ああ、それはなんとなく想像つく…
「あいつ、何て…?」
恐る恐る顔を上げて鏡越しに響輔に聞いてみると、
響輔は
「戒さんと新垣さんのこと思いっきり怪しんでましたよ」
と無表情にさらり。
その光景を思い浮かべてちょっとぞっ。
またも胃がキリキリと痛み、俺は腹を押さえた。
前回は胃炎で終わったが、今度は胃潰瘍になるかもしれねぇ。
「で?
浮気したんですか、してないんですか?
そこんとこはっきりさせてください」
響輔が鏡の向こう側で、真剣な表情で俺を睨んできて、俺は思わず唇を引き結んだ。
「別に……
浮気なんてしてへんよ」
俯いてそう答えるのが精一杯。
響輔は小さく吐息を吐いて肩をすくめた。
「じゃ、堂々としてればええやないですか。お嬢を不安にさせて、悲しませて。
あなた一体何やってはるんですか」
響輔の言葉に思わず振り返ると、響輔は真剣な表情で俺を睨んでいた。
まるで射るように見据えられて、その視線が前にカラオケボックスで見たあの険しい視線と同じものだと気付いた。
ピリピリとした殺気が静電気のように伝わってきて、俺のむき出しの肌を刺す。
「戒さん、昔から変わらないですね。
嘘つくとき、下を向きながら胃を押さえる癖―――」