。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
すぐに戸を直して、朔羅に言われた通り寝巻きに着替え、髪も乾かさず廊下に出ると
何事もなかったかのようにいつも通りの光景が広がっていた。
響輔は―――部屋に帰っただろうか。
朔羅は―――……
まさかあの二人、一緒に居るってことねぇだろうな。
朔羅の部屋を覗いてみようか、とちらっと思ったが
今の俺が心配する資格なんてないな…
と、思いとどまった。
水でも飲んで頭冷やすか、そう思ったが
台所には響輔とタクさんが居て、何やら会話中だった。
「おい、壱さんから聞いたぜ?おめぇメガネと喧嘩したんだってな?大丈夫か?
マサさんが居なくて良かったよな。ここで喧嘩はご法度だ。
見つかったら大目玉だぜ」
タクさんのちょっと心配するような声が聞こえて、
「別に……喧嘩ってほどでも」と響輔がぶっきらぼうに答えている。
喧嘩てのはあれだな。殴り合いのマジ喧嘩だ。
小さい口げんかはしょっちゅうしてるし、そんなことで咎められることはない。
「てかメガネに殴られたんだって?
てかあの虫も殺せそうもないなよっちいメガネがねぇ…」
とタクさんは未だに信じられない様子でしみじみ。タクさんはあの場に居なかったからな。
虫も殺せそうもない?なよっちく見えて悪かったな。
俺ぁこう見えてゴキの野郎もつぶせるぜ。(蝉や青虫も手でつかめます)
龍崎 琢磨より強い!(←ゴキ相手だけは)
「てか、どうしたんだよ、お前浮気でもしたか?
は!まさか噂のゆーこちゃん!?あの子のことがバレて殴られたんか?」
「だから彼女は違いますって」と響輔が呆れたように答えている。
その会話を台所の入り口でちょっと立ち聞きしていると、椅子に座った響輔と目が合った。
だが、響輔はふいと視線を逸らす。
ム
俺もぷいと顔を逸らして、
なぁにが「別に」だ!あいつ、めっちゃ怒ってるやん!!
かっこつけやがって!
俺はブツブツ怒りながらも大人しく部屋に戻った。