。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
さすがに風呂場までキョウスケを追って入ることはできない。
あいつらは男同士だから別にいいだろうケド。
一応あたしはこう見えても“恥じらい”なるものが存在する乙女だ。
しかし…
戒とキョウスケ…風呂場に二人きり!?
湯けむりの中に浮かび上がる妖しい雰囲気の美少年二人…
ブーーー!!
その状況も危険過ぎるじゃねぇか!
びとっ!
あたしは例のごとく戸に張り付いて聞き耳を立てた。
く……何喋ってるか分からん…
てかキョウスケも意外と行動派だよな。無気力そうに見えるのに。
ってか
キョウスケがこうまで気にしてるのは、
あたしのことを考えてくれてるからだ―――
あたし…考えたら無神経過ぎるかも。
キョウスケの気持ち知ってて考えなしに相談しちゃって…(←いえ、誘導尋問に引っかかったおバカなだけです)
そんなことを考えてると、
「お嬢?どうしたんスか?今メガネの野郎が入ってますぜ」
とユズと壱が怪訝そうな表情を浮かべて通りかかった。
「いや!これにはワケがあって…」
とあたふたと説明をしているときだった。
「聞こえんかったんか!?お前にあいつを渡さへんて!」
戒の怒鳴り声が聞こえて、
ガタガタっ!!
派手な音がして戸が外側にブチ破られ、キョウスケが転がり出てきた。
へ―――!!?
驚いたが、あたしは咄嗟の判断でそれを避けると、
「お嬢!」
近くに居た壱に腕を引かれて庇われるようにでかい体の背後に隠れた。
怒鳴り声を挙げたのは当然戒で、裸の腰に大きめのバスタオルを巻きつけただけの格好。
喧嘩のときの殺気を押し隠そうともせずに、普段は丸くて人懐っこそうな目を険しく吊り上げながら
キョウスケを睨み降ろしている。
「な…メガネ??」
ユズが驚いたような声で戒を見て、
「おらっ!もう一度言うてみぃ」
戒はさらにキョウスケの腹に一発…相変わらずの威力だ。全然手加減しない蹴りを入れると、キョウスケが腹を押さえて小さく呻いた。
「キョウスケ!」
あたしが叫び声を挙げると、
「お、おいっ!!メガネ!何やってんだよ!」
ユズが顔を青ざめさて戒に駆け寄り、
マズい!
あたしはユズ以上に血の気が失せる思いをした。