。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「つまり何でぃ?あいつはキョウスケを殴ってストレス発散させてたってのか?
あれは兄弟喧嘩!?」
ちょっと眉をしかめるも
「いえ、今回はストレス発散とかじゃなく、本気で怒ってたに違いありませんが」
キョウスケの口元に絆創膏を貼っていたあたしの手に、キョウスケの手がそっと重なった。
その細い指先はさっきの戒の体温よりもあったかくて、そいでもってキョウスケの顔がすぐ近くにあって
ドキリ
として目をまばたく。
キョウスケは切れ長の目だけを上げて、
「お嬢。ほんまに戒さんなんてやめて
俺にしませんか?」
と一言。
キョウスケに手を握られたまま、あたしの心臓が大きく跳ねて、あたしの指先がぴくりと動いた。
「やめておけって…あいつやっぱ浮気してたの…?」
「…いえ。そのことについてはしてない言うてましたが」
「……そ、そっか…」
「でも嘘ついてるかもしれませんよ?」
キョウスケが目だけを上げてあたしをじっと見つめてくる。
な、何か言わなきゃ…
「あ…あたしは…」
言いかけて、キョウスケの手にきゅっと力が篭る。
キョウスケが長い睫を僅かに伏せて切なそうに瞳を揺らがせると、
「俺は……
俺やったらどんな理由があろうと、
お嬢を悲しませたりはせえへん」
キョウスケがあたしの頬を優しく手で包み込むと、
ゆらゆら揺れる黒い瞳であたしを優しく見つめてきた。
真正面から見つめられて、あたしは―――
その真剣な目から視線を逸らすことができなかった。
そんな真剣に言われて
いつもあたしを気遣ってくれて、
その優しい温もりに縋りたくなる。
「お嬢―――…」
キョウスケの整った顔が近づいてくる。
ドキン、ドキンと胸が打つ。
キョウスケの唇からは爽やかなシトラスの香りがふわりと香ってきて
息と息が交わる瞬間。
唇と唇が触れ合うとき―――