。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「チークもね、お揃いの色なの」
頼んでもねぇのに新垣 エリナはポーチの中をごそごそ漁ってあたしに見せてくれる。
まるで宝物を自慢するような子供のように表情がキラキラしてる。
「へぇ。きれーな色」
お気に入りの色なのか、パレットの中の色はだいぶ磨り減ってた。
「もうなくなりそうじゃん」
思わず言うと
「うん、今日ぐらい買いに行こうと思ってるんだ。
そうだ、龍崎さんバイト終わったら一緒に行かない?」
そう誘われてあたしは目をぱちぱち。
な、何故あたしを誘う。
新垣 エリナの真意を知りたかったが、あたしの返事も聞かずに楽しそうに計画している新垣 エリナに悪意の欠片も感じられない。
ま、いっか…
一緒に居れば何が狙いなのか知ることだってできるだろうし。
と、軽い気持ちでOK。
それに―――
今日はまっすぐ家に帰っても、あたしは戒のこと心配してあいつが益々気を揉むかもしれねぇし。
ホントは…
あたしも御園医院に行って戒の病状を詳しく知りたいけど。
キョウスケが言うにはあいつもプライドがあるって言ってたし。
戒が悩んでること、少しでもあたしが肩代わりしたいんだよ。
あたしはにこにこご機嫌に計画を立てている新垣 エリナの横顔をちらりと見た。
新垣 エリナが抱えているトラブル解決…あたしも手助けできたら。
―――
―
その日のバイトはあっと言う間に過ぎた。
平日なのに客が多いこと!
お陰であれこれ悩む暇もなく無事バイトを終えることができたが。
ロッカールームに引き返すとキョウスケからメールが届いていた。
“戒さんの状況、やっぱり胃炎でした。
胃カメラ検査にげっそりはしてますが本人は昨日より元気です。
点滴を打ってもらって少し楽になったみたい。
薬も貰って2、3日自宅療養すればすぐに治るそうです。
しつこいように俺に“朔羅には報せるな”と念押ししてきた(点滴打って元気になりやがって)ので
お嬢は何も知らない素振りをしててください。
響輔”
メールを確認してあたしは小さく苦笑い。
まあ大事に至らなくて良かった。
ほっと安堵していると、
「お疲れ様~」新垣 エリナも戻ってきて、あたしは慌ててケータイを仕舞いいれた。