。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
コーチ!?
◆ コーチ!? ◆
「あたしね、メイクアップアーティストになりたいの」
街のドラッグストアまでの道のり、新垣 エリナが話してくれて、あたしは「へぇ~」と頷いた。
考えたらつい最近まで全然知らなかったしな。
こんな個人的なことを話すのもはじめてだ。
「ホントは高校卒業したら専門学校へ行きたいんだけど、親が反対して。
大学行きなさい、専門学校に行くんなら学費は出しませんって」
ちょっとしょんぼり項垂れて新垣 エリナがとつとつと語る。
「でもね、自分で学費出したら専門学校行ってもいいってことだよね。だからあたし自分でお金貯めることにしたの」
新垣 エリナがすぐに明るい笑顔を浮かべてあたしに笑いかける。
ふわふわしてそうなのに、しっかりしてんなー。
「でも親に反対されても行きたい学校があって、そんな強い夢があってあたしは羨ましいけど」
あたしが答えると
「龍崎さんはどこの大学行くの?夢は?」と聞かれた。
「あたしは…夢ってほど壮大なもんじゃないけど、料理が好きだから将来は店出せたらなーとかちらっと考えてる。
ホントにちらっとレベルだけど!」
慌てて手を振ると、
「お互いがんばろうね」
と新垣 エリナが人懐っこい笑顔を浮かべる。
ライバル宣言されたし、もしかしたらあたしから戒を奪おうとしてるかもしれないのに、
この天使みたいな笑顔にやっぱり悪意は感じられなかった。
案外喋りやすいし。思ってたほどイヤな女じゃない。
リコは警戒してたけど…やっぱり考えすぎなんじゃ…
と思ってたときだった。
「エリナじゃないか?偶然だな」
ビルの一角、大きなスポーツショップ店から出てきた男が
こちらに向かって手を振ってきて、
新垣 エリナはそれまでの楽しそうな表情から一転、
表情を強張らせて立ち止まった。