。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「テニス部のコーチ?」
キョウスケが目をまばたいて、
「一年のときだけだったみたいで、今はもう関係ねぇのにそいつ随分親しげに話しかけてきてサ。
おかしいと思わない?」
あたしは腕を組んでキョウスケを見た。
「俺、部活に所属したことないんで分からないですけど、
親しげってどれぐらいですか?」
「何かー、下の名前で“エリナ”って呼んでさ、普通呼ぶか?」
「うーん…その辺もよく分からないですね…個人の問題ですし。人懐っこい人間なら」
キョウスケが顎に手を掛けて首を捻る。
「ちょっとは考えろよ。例えばお前はコーチ。あたしは教え子。
半年ほど前に辞めた生徒と偶然ばったり会って、お前は“朔羅”って声掛けるか?」
「………」
キョウスケはあたしの問いかけに黙り込んで俯いた。
考えてるのかな…と思ったけど
「……さ…朔羅…?」
頬を染めてぽつりと漏らすキョウスケ。口元に手を当てて僅かに視線を泳がせている。
何恥らってんだよ。
そんな顔されたらこっちが恥ずかしいよ…
「って、ちっがーーーう!!
何、ラブの方向へ行こうとしてんだよ!
おめぇに相談したあたしがバカだった。ちっとも参考にならん!」
あたしが怒鳴ってバンっと思わずテーブルに手を置くと、
「お嬢!ちゃぶ台返しはやめてください」
とキョウスケが慌てる。
ちゃぶ台返しってね…あたしを何だと思ってんだ!!