。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
聞き慣れた声にびっくりして顔を上げると
あたしのすぐ隣で同じように金網に指をかけたキョウスケが。
「お、おめぇ、どうしたの!ここ学校だぜ!
守衛だって居るだろ?どうやって入り込んだ」
「簡単でしたよ?特に怪しまれることもなくあっさり」
とキョウスケはあっさり。
ここの守備ぁどうなってんだよ。
「と、まぁそれは嘘で。裏門を飛び越えてきました」
裏門から?やっぱり不法侵入か…
「見つからないうちに帰れよ」
一応忠告してみるも、
「お嬢が一緒だったら大丈夫ですよ」
と、何が大丈夫なのか知りたいけどキョウスケはあっさり。
「だって俺が一人で女子テニス部を眺めてたらただの変態でしょう?」
「いや。変態って言うよりも気が散って女子もテニスの練習に身が入らないんじゃねぇか?」
あたしはこめかみを掻いてコートの中を目配せ。
キョウスケの登場にコートで練習していた女子たちが、ひそひそキョウスケの方をちらちら。
「キャ~♪」
と、言う小さな悲鳴みたいなのも聞こえる。
普通に立ってるだけならモテモテだな、キョウスケ。
でもキョウスケはそんな女子たちのあっつい視線の意味すら気付かず真剣にテニスコートを眺めている。
テニス部の練習を二人して眺めながら、あたしはちょっと気になってたことを聞いてみた。
「か、戒の様子は?」
「だいぶ落ち着いてきてるみたいですね。でも今日はうちに居るよう言い聞かせてきました。
まぁ、大人しくていいですよ」
大人しくて…ま、まぁそうだよな。
「お嬢も新垣さんが在籍していたテニス部が気になったんでしょう?」
急に聞かれてあたしは金網をぎゅっと握った。
「まぁな。おめぇも?」
「そうですね。ちょっと引っかかったところもあったので」
キョウスケは無表情に答えて、
「あれですか?例のコーチってのは」
とコートの出入り口を目配せ。
出入り口からは爽やかなテニスウェアを着こなした、こないだ見たコーチが颯爽と現れた。