。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
あたしたちは伸びている先生をそれぞれ椅子に座らせて、眠っている格好をさせながら他の先生たちが戻ってくる前にトンズラ。
起きたときは悪い夢を見ていただけだと思ってくれますよーに。
「ふぅ~危なかった。危険過ぎるぜ、職員室」
それから近くのファミレスに入ってあたしたちは向き合ってお茶。
「お嬢は見るからに苦手そうですね、職員室」
キョウスケは目の前で涼しい顔しながらアイスコーヒーのストローに口を付けている。
「おめぇだって苦手だろ?」
「いえ?それほどでも」
ヤクザなくせして優等生め!
あたしは先生に呼び出されると、補習か留年の心配でドッキドキなのに。
「…それにしても…疲れた…」
ぐったりと机に突っ伏していると、
「疲れには甘いものがいいですよ?何か食います?」とキョウスケはメニュー表を差し出してきた。
「んー…」
あたしはのろのろとメニュー表を受け取って、向かい側でキョウスケはマイペースにタバコに火を灯している。
なっがい脚を組んで口の端にタバコを銜えながら、長い睫を僅かに伏せて…テーブルに乗せたメニュー表を眺めているキョウスケ。
「ね、あそこの彼!♪かっこよくない?」
「ホントだ!イケメン!」
と近くに座った女の子たちの噂話が聞こえてきて、あたしはキョウスケを見た。
物憂げな表情でメニューを眺めるキョウスケ。
女の子たちが噂するようにかっこいいし…すっげぇ優しいんだよな。
そんな視線に気付いたのか、キョウスケはゆっくりと顔を上げて
「お嬢……」
名前を呼ばれてドキリ
ふいうちに心臓が鳴った。
「イカの塩辛があります。俺これ食いたいです」
これさえなけりゃパーフェクトなんだがな!
なんだよ、イカの塩辛って!!おめぇどんな気分なんだよ!
それじゃせっかくのイケメンも台無しだよ!