。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「てか、これこんな大きさだっけ!?でかくなってない!!?」
期間として三日と開いてないのに、あたしが見覚えのある金魚たちはもっとちっさかった。
「ああ、それは…衛さんが夜な夜なメスを握って何かしてたから、きっと改造して大きくなっちゃったんじゃないかしら」
彩芽さんも困ったようにため息を吐いた。
ため息のつき方まで可憐だ。
って、ちっがーーーう!!
メスを握って何か!?あの変態医者め!!あたしの金魚たちに何してくれんだよ!!!
って、忘れるあたしが一番悪いのか……
「ごめんよ、金魚たち。あたしのせいであいつの実験動物にされて」
悲しげに目を伏せると、
「ってのは冗談で、これは硝子に細工がしてあるのよ。金魚たちは私がきちんとお世話して多少大きくなったかもしれないけど、前とさほど変わらないわよ」
へ!?じょーだん!?
彩芽さんはにこにこ笑う。
この優しい笑顔に、あたしは「何だよ!」と思うどころか、騙された自分が急に恥ずかしくなった。
「上から覗いてみて?」
そう言われて、リコと一緒に身を乗り出し、二人してちょっと水槽の中を見下ろすと、
「ほんとだ~、横から見たのと違うね」とリコが笑った。
「フィッシュアイレンズの応用ですよね」
戒も覗き込みながら、何気なく言う。
「フィッシュ……?」
「魚眼レンズのことだよ。水の屈折率の影響で、水中から見上げた空が円形に見えることを言うんだ」
と、戒が説明をくれる。
「へ~」
何気なく聞いてたけど、
「つまり人間の目に映る世界、魚の視界は違うってことよ。
景色は一緒なのに、どちらの目が正しい世界なんでしょうね」
彩芽さんがにっこり微笑んで、あたしたちを改めて見渡した。