。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
どっちが正しい世界―――……
「目の錯覚かもしれないってことですか?」
黙って話を聞いていたキョウスケが口を開いた。
「まぁそんなようなものかしら。
怖そうに見えるけど、実は優しかったり」
彩芽さんはほがらかに微笑みながら、組員を眺め回し、
「優しそうに見えて、本当は怖い人だったり」
次に彩芽さんは戒とキョウスケをゆっくりと見つめ、目を細めた。
柔らかい声から一転、その声が少しだけ低く重みを感じた。
戒は唇を僅かに引き結び、一瞬だけ眉間に皺を寄せる。
探るように細められた琥珀色の淡い瞳の中に、黄金色の線が一本浮かび上がりキラリと光った気がした。
一方のキョウスケは無表情。
ドキリ、とした。
彩芽さんは戒とキョウスケの正体を知ってる。
だけど組員たちはまだ知らない。
盃を交わすまで―――
秘密にしていることを知っている筈なのに、何で敢えてこんなことを言うんだろう。
「目に映るのは錯覚かもしれない。
思い込みかもしれない。
大事なことを
見失わないで」
彩芽さんはそう言って静かに微笑んだ。