とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
フロアを揺るがす程の音に誰一人として気付かない…その異変に。
危機を察知しているのは自分だけだった。
…無理だ…!彼女は守れても、ここにいる全員は…!
グラリと揺れるシャンデリアを見つめ、自分の無力さを思い知る。
…忍様だけは…!
落下してくる巨大なシャンデリアを視界に捉えながら、潤は忍を引き寄せ胸に抱いた。
「ふぇ!?…じ、潤くん!?」
…どうか…彼女を…!
スローモーションのようにただ煌めきながら近付いて来るクリスタルを睨む。
次の瞬間、辺りを風が吹き抜けた。
潤はグッと目を瞑り、衝撃に備えた。
が、衝撃どころか何も起こらなかった。
「…?…」
潤は目を開けて上を見上げる。
一陣の風に舞う無数の…純白の羽根…。
ステージのテリーが『ThankYou!』と叫ぶ声が聞こえた。
「…本当に…ありがとうございました…!」
…ハニエル様…!
潤は腕の中の忍を見て、流れる涙を抑えられなかった。