とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




ホテルで夕飯を食べている目の前の夫は、あれからずっと機嫌がいい。



基本的に右京は解りやすい性格だと忍は思う。



すぐ顔に出るし、隠し事が下手なのだ。



忍が彼に過去の女関係を聞いてもキッパリ「なんもない」と言われ、それが嘘でない事は一目瞭然だった。



忍的にはその手の話が一つや二つあった方が気が楽なのだが…。



「私だけ?…フェアじゃない…」



「俺、過去の事とか気にしないし、別に引け目を感じる必要ないんじゃない?」



「そうなんだろうけど…なんかなぁ~」



右京は苦笑しながら忍のグラスにビールを注ぐ。



「忍がどんなに男たらしだったとしても、今は俺の忍だろ?」



…“俺の忍”…。



この人は何故平然とそんな台詞が吐けるのか…。


「…って、その前に“男たらし”ってなに?」



「例えだよ」と笑う右京に忍はわざとらしく口を尖らせた。



< 11 / 469 >

この作品をシェア

pagetop