とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「ちゃんと誓ったろ?」と言われ、結婚式を思い出して忍は吹き出した。
あの時、ガチガチに緊張している忍に右京は丁度“誓いのキス”をするタイミングで小さく呟いたのだ。
「…忍…あの神父…カツラだぜ。」
周りの皆が感動する中、忍は笑いを堪えるのに必死だった。
「結局右京って肝心な時に悪乗りするわよね…」
「だってホントにカツラだったろ!?」
確かに明らかに不自然な浮いた髪だった。
もうそれしか目に入らなくて神父の顔すら覚えていない。
おかげで緊張が解けたのだが、後で「様子がおかしかった」と両親に心配され、忍は決まりの悪さを笑って誤魔化したのだった。
「あ、そういえば…あの後のアレ、なんだったんだろうね?」
「あ~ブーケトスの時の?」
右京は刺身を食べながら「ん~…」と唸る。