とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



「ちゃんと誓ったろ?」と言われ、結婚式を思い出して忍は吹き出した。



あの時、ガチガチに緊張している忍に右京は丁度“誓いのキス”をするタイミングで小さく呟いたのだ。



「…忍…あの神父…カツラだぜ。」



周りの皆が感動する中、忍は笑いを堪えるのに必死だった。



「結局右京って肝心な時に悪乗りするわよね…」



「だってホントにカツラだったろ!?」



確かに明らかに不自然な浮いた髪だった。



もうそれしか目に入らなくて神父の顔すら覚えていない。



おかげで緊張が解けたのだが、後で「様子がおかしかった」と両親に心配され、忍は決まりの悪さを笑って誤魔化したのだった。



「あ、そういえば…あの後のアレ、なんだったんだろうね?」



「あ~ブーケトスの時の?」



右京は刺身を食べながら「ん~…」と唸る。




< 12 / 469 >

この作品をシェア

pagetop