とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



エバンスは半ば諦めて『そうですね…』とため息をついた。



『奥さんの手を握っててあげればいいんじゃないですか?』



『それだけ…?』



『はい。出産に関しては、男なんて“役立たず”ですから…』



『…“役…立たず”…』



ショックで固まる右京に彼女は『失礼』と断り、机の上で鳴り出した電話に手を伸ばす。



だが、すぐに受話器から耳を離し振り返った。



『…Mr.クロサキ。日本からみたいなんです。』



本格的にやる気のない顔をした右京は『あいよ…』と受話器を上げた。



「はい、黒崎ですが…」



「ご無沙汰しております。田所です。」



…はて、誰だっけ?



眉間に指を当てながら「どーもどーも!」とハッタリをかます右京にエバンスは再び冷たい視線を送ったのだった。


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