とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
猫の口が開き、言葉を吐き出していく。
─“正直、気ガススマナカッタノダ…最初ハ…”
忍は黙って猫の話に耳を傾けた。
─“命令トハイエ、貴方ニ【力】ガアルトハ思エナカッタ”
一体何を言っているのだろうか…。
聞き返したくても忍は声を出す事が出来なかった。
─“…ダガ我ハ間違ッテイタト貴方ニ逢ッテ理解シタ”
猫は平伏すかの様に頭をゆっくりと下げる。
─“我ハ…貴方ニ忠誠ヲ誓ウ”
忍はなんとなく判ってしまった…猫は自分に言っているのではないと。
そして自分も自分ではないのだ。
その証拠に誰かの声が頭の中に響く。
─“僕も君を信じるよ…”
それは、初めて聞くのによく知っているような声だった。