とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
─“どんな理不尽な命令にも従順でいる事”
それが天使である自分のモットーだった。
そんな彼が初めて神に対して憤りを感じたのは、ウリエルが堕天させられた時である。
…あんなに優しく強く、そして寛大な方を何故!?
自分の主であるイシスに彼はそう抗議せずにはいられなかった。
イシスは綺麗な瞳でハニエルを睨み、ただ一言言った。
─“今の言葉、聞かなかった事にしてやろう。…だが、間違ってでもお前は裏切らないでおくれ?”
ハニエルはイシスの冷たい眼差しに身動きが出来ない程の恐怖を感じ、それ以上何も言い返せなかった。
そしてイシスは堕天したウリエルの魂を地に落とすようハニエルに命じた。
奥歯をギリギリと噛み締め耐える彼にウリエルの魂は語りかける。
“これでいいのだ”…と。