とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
彼の血の滲む拳をガブリエルがそっと包む。
ハニエルが顔を上げると彼女は優しく微笑んだ。
『…神には逆らえないが、ウリエルの意を汲む事は可能だと思いませんか?』
思ってもいなかったガブリエルの言葉にハニエルは驚き目を剥いた。
『…密かにウリエル様に手を貸そうと…?』
『いえ、私はそんな事は言っていません。“可能”だと言っただけです。』
にっこりと笑うガブリエルにハニエルも次第に笑みを溢す。
ガブリエルはウリエルに償いをしたかっただけかもしれない。
それでもハニエルはガブリエルの言葉が嬉しかった。
…ウリエル様…貴方は独りではありません!
そして自分も独りではない。
それだけでも彼には心強く、これから自分がしようとしている事にも微かに自信が湧くのだった。