とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
『神に報告が必要と思う者は行けばよい…。案ずるな、私は君達が“怖じ気付いて戦線離脱した”などとは言わない。』
ハニエルの言葉に一同は目を合わせて戸惑いがちに口を開いた。
『…ほ、本当だな?』
『私も君達も嘘は付かない。よく知っているだろう?』
かえって独りの方が行動しやすい。
…どのみち当てになどしていなかったのだし…。
申し訳なさそうに皆が翼を広げる中、独りだけ動かない天使が居た。
…ちっ…アズラエル様か…
彼は大事そうに大きな帳簿を脇に抱え、ハニエルにニコリと微笑んだ。
『私も残るよ、ハニエル。死人が出たら…大変だろ?』
別に彼は死人が出る事を危惧しているのではない。
心待にしているのだ…手にした帳簿から死人と化したその人物の名を消す事を…。