とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



死を司る天使の中でもアズラエルが一番曲者だった。



小柄でいつもニコニコとしていて、一見人当たりも良くおおらかなイメージがする。



だが、ハニエルは彼がその仮面を取った所を見たことがない…如何なる時も。



誰が死のうが常に笑顔を絶やさないのだ。



それが余計に不気味で、何を考えているのか判らない…アズラエルとはそんな天使だった。



戦線を離脱していく天使達を見送って二人は上空から地上を見下ろした。



『さて…何人の名前が消えるかな?』



『穏やかじゃないですよ、そんな物言いは…』



『フフフ…別に私が殺める訳ではない。穏やかでないのは奴等だよ。』



確かにアズラエルは命を奪ったりしない、傍観しているだけに過ぎない。



だが、手を差し伸べるような事も無いだろう。



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